スミモトです。
前回に引き続き24回以降のフライヤーについて振り返ります。
○第24回「HISTORICA」
本作は海をまたぐ壮大な内容で、三つの国の間で絶えず繰り広げられる争いの物語です。状況に翻弄されながらも立ち上がろうとする女性の姿が劇中で描かれますが、この様子をビジュアルで表現したいと考え、写真の撮影をお願いしました。
ワークスの公演はここの所毎年3月が恒例になっていますが、逆算するとフライヤーは1月にはほしい(もっと言うと元旦には配れるようにしておくのが理想)、台本が決まるのは10-11月ごろ、という感じで、撮影をするなら真冬にやることになります。
この撮影は年末だったか年始だったか、その位の時期に冬の向島で撮影したもので、しかも夜明けで撮りたかったので総裁と多留さんにご無理をお願いしてご協力いただきました。
(衣装も舞台衣装ですからめっちゃ寒いです…)
タイトルを含む構図をあらかじめ決めていたこともあり、それからの制作は早かったと思います。
撮影も含めてすべて意図した通りにできた思い入れの深いフライヤーです。
〇第25回「サマータイムマシン・ブルース」
メジャー脚本の中では一番苦しまずに作れたかもしれません。
そして、そういう時は大体出来上がりに満足しています。
ということで、このフライヤーも歴代で特に気に入っているものの一つです。
サマータイムマシンブルースは映画化もされていますし、
ワークスの舞台だからといってあまりイメージをずらすようなデザインは不要と考えました。
と、いうところで、既視感を感じる(つまりあの作品か、と安心してもらえる)ような
仕組みを紙面上にいくつか入れています。
物語の軸になるタイムマシンは絶対に必要だ!と思い、
イラストを妻に書いてもらいました。
(なお、私は趣味でフライヤーを作ってますが、妻は本職なので何でもできてしまいます。
実はフライヤー裏面の地図も作ってもらってます)
ヨーロッパ企画の舞台版と映画版で作りこみは違いますが、何となく、
平べったい床板に簡素な機械がくっつけられている、というチープさが面白みになっています。
おそらくはドラえもんのタイムマシンをモチーフにしているだろう、ということで
タイムマシンのイラストもそれに寄せてもらいましたし、
チラシの配色自体も寄せました。
ドラえもんの色は青(体)、赤(鼻)、黄(鈴)ですが、
実は印刷で使用する4原色のうちの3つ(シアン・マゼンタ・イエロー)が近いのです。
と、いうことで3原色を使って紙面を構成してみました。
原色を使うとビビッドな感じも出て若々しい雰囲気になります。
ということで、この連想は結構バチっとハマったなというのが今振り返っても感じるところです。
〇第26回「楽屋ちゃん」
これは今まで原則としていたことを完全無視して作ったフライヤーです。
原則としていたこととは、前回書いた「出演者の顔を前面に出す」というものです。
なぜ無視したかというと、この脚本は「上演中の舞台の裏、楽屋を描いた物語」であって、題材として裏をやっているために、そこに輪をかけてイメージ画にしてしまうとフィクションのフィクション、であまりにも遠くに行ってしまいそう…という不安からです。
※正直に言うと題材が演劇ファン向けであり、ビギナーには浸透に時間がかかりそうと思いました。
そして、それを劇団員の皆さんが配って回るときに
「これは舞台の裏側の話であって…」とあらすじを話す様子も大変苦しいなと感じたので、
「これオレが出てます!」ぐらいシンプルにしちゃっていいかなと思いました。
人を紙面にたくさん出すとガチャガチャします。なので、よりゴテゴテにしちゃう。
という作りでフライヤーを作りました。
「僕たちの好きだった革命」と似た雰囲気の仕上がりになっていると思います。
〇第27回「HISTORICA:2021再演」
第24回の再演です。
今更なんですが、ワークスって殺陣の仕上がりがめちゃめちゃ凄いのです。
HISTORICAも激しい格闘が超ハイスピードで行われます。
照明・音響効果の仕上がりも極まってます。
これを備後で見ることはなかなかできないはずです。
で、逆に言うと殺陣が凄すぎてストーリーの記憶が…飛びます…。
(ごめんなさい、観劇の経験値が低い僕の個人的な感想ですけど)
というところで、再演にあたり、
フライヤーで物語をもう少し前面に出して導入をつくってもよいのでは、と思い
表面にあらすじをしっかりと読んでいただけるよう掲載してみました。
タイトル字はそれに合わせてレイアウトを変更しました。
一番読ませたかったのがストーリー、という
情報の優先度を変更した例になります。
メインビジュアルの色味や明るさも上記に合わせて変更しています。
視点の誘導が前回は真ん中からだったものを、右→左に移動するように全体的なバランスを調整しています。
〇第28回「発表せよ!大本営!」
これは題材がめちゃくちゃ難しい作品でした。
第二次世界大戦中の大日本帝国で大本営発表を脚色しまくっていたという史実を
コメディ調で描くものですが、これを分かりやすく表現することは大変難しいので、
フライヤーを何とかじっくり読んでもらいたいな…というのが最初に考えたことでした。
そこで、ミッドウェー海戦が物語の軸になっているということで
海戦ゲームをイメージして碁盤の目状に背景を引き、
それをクロスワードパズルとして組み立てて、物語に関連するワードを散りばめてみました。
本作で一番時間がかかったのはこのクロスワードパズルの組み立てです。
※実は「白いマスは連続して並んではいけない」などクロスワードの御法度があり、
タイトルを置かなければならない、などの理由で全然守っていないところがあります。
チラシの紙質は鉛筆やボールペンでも書き込めるものにしました。
実際に会場に書き込んで持参されたお客さんもいたようで大変ありがたいです。
(ただ、だからといって何も景品を用意しておらずすみません、、)
日本語/英字フォントの組み合わせもかなり気に入っていて、
細かな作業が多かったものの、納得できるまとまり方になってよかったなと思っています。
〇第29回「俺たちは志士じゃない」
本作も殺陣のカッコよさが目立つ作品です。
一方で、あまりストレートにその雰囲気が伝わるようなフライヤーは
これまで作っていませんでしたので、
「殺陣がサイコーな演劇集団ワークス」の
雰囲気が見た目一発で伝わるようなフライヤーを目指してみました。
写真はライティングや配置のイメージだけお伝えしてすべて撮影をお願いしました。
流石、ライティング含めばっちりで本当に助かりました。
書体は、かつてワークスの印刷物で使われていた
「Impact」というフォントに近い書体を使っています。
こういうところからも懐かしさを出してみたのですがいかがだったでしょうか。
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以上、24回から29回までの6回分の紹介でした!
次回は今回の公演となる第30回「スイッチ」。
実は技術的なブレイクスルーが多くあって
かなり面白いフライヤーづくりになりました。
上演前なので物語のことはあまり書けませんが、
今回のフライヤーをどうやって作ってるかは
少しご紹介したいと思います!
【文】スミモト
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